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2016年9月14日水曜日

【六英雄】六英雄セレナ編 五章【てぃーんの小説】

※こちらはオリジナル。pixivにはございません。
色塗り期待しています


六英雄セレナ編 第五章


五章 その憧憬を求めて


 初撃は互いに引き分けた。王剣と宝剣は悲しみからか、激しい金属音を鳴らす。

「あなた達のせいで、私の自由は奪われた!」

――あぁ、なんて私は汚いのかしら。

「それでもそれはお前が選んだのだろう!」

――あぁ、なんて僕は汚いのだろう。

「私の自由を返して! 私の……私の一番大切なものを返しなさい! サーマ王家!」

――なんでこんなことを言ってしまうの? アリウス様が仰っている通りじゃない。私が選んだのよ。それが例え、どんな理由であれ。

「私の英雄を返せ! 民のために、国のために勇ましく、美しく戦った英雄を!」

――くそっ。僕は何を言っているんだ。これが身を粉にしてまで戦ってくれた英雄に対する言葉か。

「ブリザードペイン!」

 氷嵐がアリウスを襲う。

「ノーブルスティング!」

 それをアリウスは剣圧で散らす。
 二人の奥義は爆ぜ、周囲に砂嵐を起こした。それに驚いた海軍一同が何事かとキャンプから現れる。

『何が起きた!?』
『アリウス様とセレナ様が!』
『何をやってるんだ?』

 ぐしゃぐしゃとセレナは頭を掻き毟る。それにより髪は乱れ、彼女の悲痛な表情がより切なく映った。

「私はいつまで英雄でいればいいの!? 答えなさい、第三王子アリウス!」
「英雄になることを選んだのは貴女だろう! 英雄の責務はそんな簡単に投げ捨てられるものであるわけがない!」
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!」

 二人の剣が再度鍔迫り合い、衝撃波を産む。

『誰かあの二人を止めろ!』
『不可能です! あの二人に敵う者などここには!』

 剣戟は激しく、想いを散らす。
 英雄の重責全てを、少女如きが理解できたろうか。結果を残し、そう呼ばれただけでしかないのに。
 ただ憧れを向ける者に、英雄の思いを慮れるか。美しかったから、強かったから憧れただけなのに。

「幼い頃から〝押し付けられて〟きた! 剣技も、立場も、宝剣も、期待も希望も羨望も嫉妬も憎悪も、ましてや〝他人の命〟さえも! それがどれだけの重圧であったかも知らないくせに!」

 不安で潰れそうになったときもあった。多くの命を任されたとき、発狂しそうになるほど恐ろしかった。

「私は……私はもう嫌なのよ! 私のせいで誰かが傷つくことが! 私が誰かを傷つけることが! 何で私なの! 何故私でなければいけないの!」

 アリウスはぎりと歯を食い縛り、渾身の力を込めセレナの剣を弾いた。レクシーダは宙で二度回転し砂浜に突き刺さる。

「貴様のせいで誰かが傷付くだと!? 貴様の宝剣は! 貴様の英雄としての姿は! その程度で誰かを傷付けるものか!」

 アリウスは王剣の切っ先をセレナへと向けた。

「立て! 宝剣を手に取れ救国の英雄ジル・デ・ラーヴァ! 貴様の姿は! 我々サーマの誇りだ! 誇りを捨てるな! 立ち続けろ! 英雄であり続けろ!」

 肩で息をする二人の視線が交わる。
 ふっ、とセレナは自嘲気味に笑い、その場で両膝をついた。

「殺して、ください。王族に楯突いた私を」

 アリウスは王剣を振り上げる。

「……私も同じだった」

 だが彼はそれを降り下ろすことはなく、ぽつりと、語りだす。

「生まれたときから王になるべく必要なものを押し付けられた。第一、第二王子に負けぬようにと。そして求められた。王にとって必要なもの全てを」

 アリウスは剣を納め、レクシーダを手に取った。

「だから、私は選んだ。覚悟を決めた。それは国のために戦い、民を守り、脅威となるもの全てを殺す覚悟だ。だがあなたは違う。あなたは自由だ。自由なんだ、英雄セレナ」

 アリウスはレクシーダを取ると片膝をつき、恭しく彼女に差し出した。

「あなたはどこにも属さない。あなたは自由な正義だ。私やここの海軍に属しているわけではない。だから皆があなたを愛し、誇っている。操り人形などと思わないでほしい。貴女の糸を私たちに託さないでほしい。貴女の正義の赴くままに、この宝剣を掲げてほしい」

 セレナはまだ宝剣に手を伸ばすことを躊躇っている。

「お願い、です……英雄セレナ。私に、あなたの背中を、追いかけさせてください」

 セレナに顔は見えないが、アリウスは涙を流していた。その涙は暗い砂浜を確かに黒く染めていく。

「いつか、いつの日か私が、貴女を救ってみせますから……それまでは、英雄でいてくれませんか? 貴女が自由を謳歌できるよう、私が貴女に追い付きますから……どうか、それまでは待っていてくれませんか?」

 英雄の重責も、王の重責も、決して違うとは言えない。しかし、同じとも決して言えない。
 だからこそアリウスは新たに誓う。国のためではない。王子だからでもない。
 戦いを共にし、背を預け、互いに戦友であるのに、それなのに王族でもない者に国を背負わせる。
 それにアリウスが恥を覚えぬわけがない。本来ならば、彼女の重責は王族が背負うべきなのだ。まだ二十にもならない少女が背負うべきではないのだ。
 わかっている。わかっているからこそアリウスが、第三王子がそんな簡単なこと言えるわけがない。

「この国には今、貴女が必要なのです。必ずや、私が……サーマ王国王位継承第三位のこのアリウスが、貴女を自由にすることを誓い、あなたに恥じぬ〝救国の英雄〟になると誓います」

 だから誓うのだ。〝救国の英雄〟という名が重いのなら代わろう。しかし、それを名乗るのにはまだ自分は弱すぎるから。
 情けない。なんて情けないのだと、内心恥じ入りながら。
 それでもアリウスは、いつか代わることを誓う。憧れた英雄に、いつかなると。憧憬を叶えてみせるのだと。

「アリウス……様」

 セレナは宝剣を受け取ると、立ち上がった。

「アリウス様。あなたが誓うというのなら、私も誓いましょう」 

 いつもの凛とした声。
 それを聞いてアリウスも立ち上がる。

「私は、戦いたくありません」

 アリウスは続きの言葉を待った。

「私は、守りたい」

 セレナは、真っ直ぐにアリウスへと瞳を向けた。

「国のために生きてきた、力なき人たちを、戦う術を持たない人たちを、私を支えてくれる人たちを」

 それは茨の道だろう。全てを守るのは、言うほど簡単ではい。守りながら戦うのは、至難の業だ。戦場を知っている彼女もそれは十分にわかっているだろう。
 それでも、彼女は〝選んだ〟のだ。
 それでも、彼女は〝覚悟〟したのだ。
 アリウスは優しく微笑んだ。

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